家族の闘病経験で大変だったことのひとつは、「お見舞いでどんな言葉をかけたらいいのかわからなかった」ということです。毎日少しでも顔を出すようにはしていたのですが、とくに話すこともなくなっていったのですよね。そんなに代わり映えのない毎日ですから、「今日あれがあってこれがあって」といったようなおもしろ話がないもので。

しかし今にして思えば、他愛もない話で十分だったのだろうと思います。最後の方は、本当に話すネタもなく、「今、私が見ていて面白いと思ったテレビ番組の話」だとか、「電車の中から見た変な看板の話」だとか、一方的に私が話して、ある意味では私の独演会ぐらいな状態だったのですが、しかし患者さんからしたらそれで良かったのだろうと思います。

けれど患者さんが自分の家族ですから、後悔の念も多いですが。もっとああすれば良かったとはやっぱり思ってしまいますね。自分の家族ともなりますと、やっぱり思いは違うものです。やはり後悔の気持ちはありますね。